吸盤式カメラマウント Fat Geckoプロフェッショナルレビュー
吸盤式カメラマウント Fat Geckoレビュー 担当 佐治昌典
今回のオーストラリアロケでは国内では撮影が難しい大型車の撮影が主となる。また法規制により通常では難しい並走撮影なども、同国関係官庁の計らいにより許可された範囲内において可能となっている。そこで今回はデルキンデバイス製「FAT GECKO」を使用しての撮影にトライすることとした。撮影車両として用意したクルマの側面に大きなふたつの吸盤で「FAT GECKO」を装着する。そこに「EOS 5Dマーク2+EF16-35mm F2.8L II USM」をセットした。このカメラセットだけでも約1.5kgとなるが、最大積載量2.7kgの「FAT GECKO」はびくともしない。試しにアームをつかみ手で引っ張ってみたが容易にはがれてしまうような様子は微塵もない。
「FAT GECKO」ーふとったヤモリーという名前がついたカメラマウント機材がある。ふたつの大きな吸盤でガラス窓やクルマのボディなど平滑面ならどこにでも固定できる製品だ。このユニークなカメラマウントをオーストラリア郊外でのロケで使用したレポートをお届けする。
近年、デジタルカメラの進化には目を見張るものがある。数年前まではハイクオリティな商業印刷が前提の広告写真の世界ではフィルム撮影が常識であったが、2000万画素を超えるモデルが定着した現在では、特別なオーダーによるフィルム撮影を除けばデジタル撮影によるワークフローに取って代わってしまった。
更に最新のデジタルカメラではHD動画撮影が可能なモデルが続々登場しており、スチルとムービーの融合が始まっている。広告写真家である私の環境においてもそれは例外ではない。既にHDムービー撮影が可能なキヤノン「EOS 5Dマーク2」を使用してのスチルとムービーを平行しての撮影を行っている。私のクライアントのひとつである自動車メーカーの撮影オーダーもそのひとつだ。
今回のオーストラリアロケでは国内では撮影が難しい大型車の撮影が主となる。また法規制により通常では難しい並走撮影なども、同国関係官庁の計らいにより許可された範囲内において可能となっている。 そこで今回はデルキンデバイス製「FAT GECKO」を使用しての撮影にトライすることとした。 撮影車両として用意したクルマの側面に大きなふたつの吸盤で「FAT GECKO」を装着する。 そこに「EOS 5Dマーク2+EF16-35mm F2.8L II USM」をセットした。このカメラセットだけでも約1.5kgとなるが、最大積載量2.7kgの「FAT GECKO」はびくともしない。試しにアームをつかみ手で引っ張ってみたが容易にはがれてしまうような様子は微塵もない。
アーム先端部の自由雲台を調節、カメラの画角を合わせムービーをスタート。 クルマを走らせて撮影を開始する。今回の撮影地は都市から離れた荒涼とした景色のなかで行った。したがって路面はオーストラリア特有の赤土で固められた未舗装路である。そのおかげでクルマの速度を上げていくに従い路面からの振動が大きく伝わってくる。クルマの側面を見ると「FAT GECKO」で装着したカメラにも振動が大きく伝わっている様子であった。
撮影終了後、カメラと「FAT GECKO」の様子を確認したところ、装着時と比べてもまったく変化が見られない。 吸盤部も手で触って確認したが緩みもまったくなくカメラもしっかりと固定されていた。 実はこの「FAT GECKO」の吸盤部は吸着する面の曲がり具合に合わせて角度を変化させることが出来る造りとなっている。 したがって吸盤は面に対して垂直に貼付けることができるようになっているのだ。 これが驚異的な吸着力の要因となっているのだろう。また大きな吸盤が2個用意されているのも心強い。 万が一、片方の吸盤が緩んだとしても強力な吸着力のもう一つの吸盤が一時的にもカメラの落下を防いでくれるだろう。 かつて使用してきた同様の製品では吸盤が1つだけのものが多く正直なところ常に落下の心配に付きまとわれていた。 その点で考えても大きな吸盤が2つ用意された「FAT GECKO」は安心感が高い製品といえる。 また一見小さめにも思える自由雲台だが走行中緩むこともなかった。 ただ残念なのはカメラに取り付けるネジの長さが若干長く奥までねじ込んでも余ってしまう。 ロックのための座金円盤をカメラ底部まで回し固定しても、すぐに緩んできてしまう。 しっかりと固定するには少し厚みのあるスペーサーを間に挟むといいだろう。この点はぜひとも改善してほしい。
装着手順
クルマの取り付け面と吸盤部分のゴミや汚れを丁寧にウエス等で拭き取る。土汚れや油汚れが残っていると吸着力が極端に落ちるので、使用中に落下する危険がある。乾拭きで仕上げてウエスの水分も拭うようにしよう。
吸盤の角度調整ネジを一旦緩めてておき、張付け面の角度に合わせたうえで2個の吸盤を貼付ける。しっかりと貼付けたら吸盤のロックレバーを倒した後に角度調整ネジを締める。先に角度調整ネジを閉めてしまうと取り付け面の曲がり具合にフィットせず吸盤が浮いた状態となってしまうので、かならず最後に締めるようにしよう。
自由雲台にカメラを取り付けフレーミングする。今回は走行車両のボディ側面に取り付けたので、走行時の上下振動に対処出来るように2個の吸盤の位置を縦位置になるようにセットした。状況に応じて一番安定する角度を選びたい。
撮影画像ムービー
今回の撮影では「FAT GECKO」をクルマの側面に装着して走行した。未舗装路の大きな振動があったにも関わらず吸盤が緩む事もなく安定して使用することができた。 もっとも更に強い振動や長距離での使用などでは注意が必要になるだろう。しかしそのような撮影の場合は撮影専用特殊車両を手配することが前提となるはずだ。 そういう点ではこれほど簡易なセットで安定かつ安心感のある撮影が行えるのは嬉しい。 更に今回のような移動しながらの撮影だけでなく、運転席内など狭く限られた空間での撮影にも便利に思える。 通常であれば三脚を立てるスペースがなくカメラを固定することが困難であっても、ウインドウに「FAT GECKO」を貼付けてカメラをマウントすることで最大限に空間を活かした撮影を行うことが可能だ。
このように「FAT GECKO」はアイデア次第でさまざまな撮影に応用することができるカメラマウントだ。 特にデジタルカメラならではのリモートライブビュー撮影などを取り入れることで、スチル・ムービー撮影共に表現領域を広げてくれる可能性がある。 これからも積極的に使用していきたい機材のひとつだ。
注意
今回公開した映像は関係官庁の許可の下で撮影されたものである。車の内外にカメラ等を取り付けて走行することは日本国内だけでなく、多くの国でも道路交通法により厳しい規制がある。 使用の際には現地の道交法を確認のうえ安全に配慮していただきたい。
2009.8.6 SAJI MASANORI
佐治昌典 フォトグラファー 1965年神奈川県生まれ 東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)卒業後、出版社、広告写真プロダクションを経て独立。現在、有限会社スタジオシオン代表。広告写真家として企業の広告写真撮影を中心に活動。人物・商品・舞台撮影など幅広く撮影を行う。俳優や音楽家などのポートレートも精力的に撮影。日本広告写真家協会(APA)正会員。 |
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